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「夫婦別姓」論又は「選択制夫婦別姓」論

民法750条は、「夫婦は婚姻の際に定めるところに従い、夫又は妻の姓を称する。」と定められています。

これが、「夫婦は婚姻の際に定めるところに従い、夫の姓を称する。」又は「……妻の姓を称する。」との規定であれば、明らかに女性差別又は男性差別になり、憲法14条違反の規定として、無効となります。しかしながら、「夫又は妻の姓を称する。」となっているのですから、憲法違反の規定ではありません。


また、戸籍法74条は、婚姻をしようとする者は、左の事項を届出に記載して、その旨を届け出なければならない。


一 夫婦が称する氏

ニ その他法務省令で定める事項


そして、民法夫婦別姓を認めない民法と戸籍法の規定について、最高裁判所大法廷は2021年6 月23日、これらの規定が、憲法14条違反又は憲法24条の「夫婦は婚姻の際に定めるところに従い、夫又は妻の姓を称する。」「夫婦は婚姻の際に定めるところに従い、夫又は妻の姓を称する。」の各規定が婚姻の自由」には違反しないとする判断に当たらないとしたのです。


15人の裁判官中11人が「合憲」との判断を下し、違憲と判断したのは4人でした。苗字を変えた女性の話を聞きますと、あらゆるものの苗字を変える手続きの煩雑さであり、銀行口座からクレジットカード、運転免許証、健康保険証……終わったと思っても、後から後から名義変更しなければならないものが出てきて、相当なストレスだったということです。当時、仕事で忙しかったこともあり、この煩雑さを、結婚(法律婚)をしている女性たち全てが引き受けていることに呆然としました。当時、仕事で忙しかったこともあり、この煩雑さを、結婚(法律婚)をしている女性たち全てが引き受けていることに呆然とした。


もちろん、「結婚の実感」として、手続きをむしろ喜びと感じる人がいることもわります。それはそれで素晴らしいことですが、「私にとっては煩雑以外のなにものでもなかった。」ということです。


そして、15人の裁判官中11人が憲法24条の「婚姻の自由」には違反しないとする判断を示し、4人は違憲とする意見や反対意見を出しました。 大法廷は2015年にも民法の規定を合憲としており、「夫婦別姓を認めない」という判断は今回で2度目となります。「社会や国民の意識の変化を踏まえても、2015年判決の判断を変更すべきとは認められない」とし、選択的夫婦別姓などの制度の在り方は「国会で論じられ、判断されるべきだ」と指摘しました。


この大法廷判決をみると、「選択制夫婦別姓」論を法律で定めることは、憲法に違反しないが、現在の民法750条及び戸籍法74条の規定が、憲法14条及び憲法24条に反しないと判断したものであり、私も正しい判断ではないかと思います。



弁護士法人銀座ファースト法律事務所 弁護士 田中 清


# by lawyer-tkg | 2021-07-02 19:50

大宮監禁致傷事件について

令和3年6月17日、さいたま市大宮区のインターネットカフェの個室に、客の男性が女性従業員を人質にして立てこもりました。この事件は、発生から32時間余り経過した同月18日午後時10時35分ころ、埼玉県警捜査員が突入し、監禁罪で男性客を逮捕し、女性従業員を保護しました。


捜査員は個室のインターホンやドア越しに呼び掛けて説得しましたが、金品の要求や政治的な主張などはなく、目的が判然としないため交渉が難航しました。捜査官は、その後にマスターキーを使って入室を試みましたが、被疑者が個室のドアが開かないよう鍵に細工していたとみられ、ドアが開きませんでした。


18日午後8時すぎ、被疑者から「寝る」「休む」と連絡があって以降、応答が2時間以上途絶えたため、捜査官は、被疑者が眠ったものと判断し、鍵を壊して室内に突入し、被疑者を逮捕し、女性従業員を保護しました。


犯人確保までに丸1日以上かかった理由について、県警は「被害者の安全確保を最優先に考え、説得交渉を続けていた」と説明しました。個室は3畳ほどと狭い上、入口以外に窓がなく内部の様子を把握しづらかったため、突入の判断は難しく、慎重に対応したと述べました。失敗がゆるされないぎりぎりの判断で、 犯人確保までに丸1日以上掛かったことは、私は、やむを得ないものと思います。


上記の被疑者の行為は、監禁罪に該当しますので、刑法220条により、3月以上7年以下の懲役に処せられます。逮捕監禁罪は、人の身体活動の自由を侵害する罪です。


しかし、女性従業員が、怪我をしていれば、監禁致傷罪として、3月以上15年以下の法定刑になります。報道によりますと、女性従業員は、首に加療2週間のけがをしているとのことですので、監禁致傷罪が適用されます(刑法221条)。


さて、本件での量刑はどうなるでしょうか。女性従業員に過失はなく、一方的に被疑者が責められるべき事案であること、被害者である女性従業員が受けた心の傷は大きく、実刑の可能性は高いものといえると思います。もちろん、示談の成立や女性従業員の宥恕などの弁護活動があれば、執行猶予が取れる事案かもしれません。女子従業員が報道によって、これ以上深い心の傷を負わないよう、報道関係者には、特に配慮を望みたいと思います。


銀座ファースト法律事務所 弁護士 田中 清


# by lawyer-tkg | 2021-06-21 23:46

銀座ファースト法律事務所の法律のお話:「不能犯」とは

昨年11月20日、埼玉、茨城の両県警は埼玉県三郷市に住む25歳の男性、A容疑者を三郷市火災予防条例違反の疑いで逮捕しました。


「硫黄を飲ませる」と聞くと、私はすぐに、刑法を学び始めた最初のころに知った判決を思い出します。

行為者が犯罪の実現を意図して実行に着手しましたが、その行為からは結果を発生させることは、到底不可能であったという大審院大正6年9月10日判決でした。


この事件は、硫黄粉末を飲食物などに混ぜて毒殺しようとした事例について、殺人については不能犯であるとして罪に問わず、傷害罪にとどめた判決です。しかし、何も身体に異常を来さなければ暴行罪にしかなりません。


他に、不能犯として例に挙げられるのは丑の刻参りです。ある人を殺そうとして夜中に藁人形に五寸釘を打つという行為です。このような呪術で人は殺せませんので、不能犯として殺人罪にはなりません。

もっとも、住居侵入罪、器物損壊罪、脅迫罪に問われることがあり得ますので、注意が肝要です。


冒頭の「硫黄を45kg所持していた」ということは、三郷市火災予防条例違反に問われるということです。A容疑者は、一体、何をしようとしていたのでしょうか。


銀座ファースト法律事務所 弁護士 田中 清


# by lawyer-tkg | 2021-05-10 19:57

銀座ファースト法律事務所の法律のお話:木村花さんに対する誹謗中傷と侮辱罪その3

なぜ、被疑者は逮捕されなかったのでしょうか。
検察官は、書込み後いつまでに起訴しなければならないのでしょうか(公訴時効)。

これには、被害者の告訴が必要でしょうか(親告罪)などについて述べてみましょう。
逮捕には、通常逮捕、緊急逮捕、現行犯逮捕があります。
司法警察職員らは、事前に裁判官から発付された令状(逮捕状)に基づいて、被疑者を逮捕することができます(刑訴法199条1項)(これを通常逮捕といいます。)。
ただし、30万円以下の罰金、拘留又は科料に当たる罪については、被疑者が定まった住居を有しない場合又は正当な理由がなく前条の規定による出頭の求めに応じない場合に限って逮捕することができ、侮辱罪のように、拘留又は科料に当たる罪については、原則として通常逮捕ができません。
したがって、本件の被疑者は、定まった住所を有していたので、通常逮捕ができなかったのです。

緊急逮捕とは、司法警察職員らは、死刑又は無期若しくは長期3年以上の懲役若しくは禁錮にあたる罪を犯したことを疑うに足りる充分な理由がある場合で、急速を要し、裁判官の逮捕状を求めることができないときに限って、逮捕状なしにその理由を告げて被疑者を逮捕することができます(刑訴法210条1項)。

最後に、現行犯逮捕とは、現に罪を行い、又は現に罪を行い終った者を現行犯人といいます(刑訴法212条1項)。また、刑事訴訟法に定められた罪を行い終ってから間がないと明らかに認められる者も現行犯人とみなされ(準現行犯、刑事訴訟法212条2項)、誰でも。逮捕状なくしてこれを逮捕することができます(刑事訴訟法213条)。現に罪を行い、又は現に罪を行い終った者を現行犯人という(刑事訴訟法212条1項)。また、刑事訴訟法に定められた罪を行い終ってから間がないと明らかに認められる者も現行犯人とみなされる(準現行犯、刑事訴訟法212条2項)。現行犯人は、何人でも、逮捕状なくしてこれを逮捕することができる(刑事訴訟法213条)。

このように、「匿名だから」「みんな書き込んでいるから」といった軽い気持ちで過激なコメントをするのは危険です。今回の木村花さんのように、侮辱を苦に自殺の結果をもたらしたのですから、捜査機関も厳しく対応しようとしたのは、当然だと思います。
おそらく、今回の場合、捜査機関は、科料9000円の略式命令を請求するでしょう。
そして、侮辱罪の公訴時効は1年で完成し、書き込みをしたときから、公訴時効は進行します(刑訴法250条3項7号)。そして、侮辱罪(刑法231条)の罪は、被害者の告訴がなければ公訴を提起することができませんので、親告罪です(刑法232条)

 なお、刑罰が科されなくても、不法行為による損害賠償請求権はできますので、被害者が損害及び加害者を知ったときから3年間、不法行為のときから20年間、損害賠償請求権を行使しないときは、時効消滅します。


銀座ファースト法律事務所 弁護士 田中 清

# by lawyer-tkg | 2021-04-25 20:16

銀座ファースト法律事務所の法律のお話:木村花さんに対する誹謗中傷と侮辱罪その2

侮辱罪とは、事実を摘示しないで、公然と人を侮辱することを内容とする犯罪で、刑法231条に定められています。すなわち、「事実を摘示しなくとも、公然と人を侮辱した者は、拘留又は科料に処する」とされています。

拘留とは、1日以上30日未満、刑事施設に拘置される刑罰です(刑法16条)。刑事施設から出られないということで、懲役や禁錮と同様に自由を奪われる自由刑の一種ですが、執行猶予が認められないので、必ず実刑です。しかし、執行猶予が認められないことから、住所不定などの被告人に限られると思います。最近では、拘留が認められるのは、1年間に数件しかありません。
侮辱罪の場合、法定刑に拘留又は科料と定められていて、原則として科料が言い渡されるので、拘留に処せられるのは、ごく稀です。

科料は、1000円以上1万円未満の刑罰です(刑法17条)。執行猶予が認められないので、実際に支払わなければなりませんが、大抵、略式裁判で簡単な裁判手続で刑が確定し、支払いをするのです。
本罪の保護法益については、名誉毀損罪と同じく、外部的名誉(社会的名誉・社会的な評価)であるとするのが通説です。
侮辱罪は、規定されている犯罪において、法定刑が最も軽いものです。法定刑に拘留・科料しかないことから、幇助犯・教唆犯は処罰されません(刑法64条)。

銀座ファースト法律事務所 弁護士 田中 清

# by lawyer-tkg | 2021-04-18 01:12

銀座ファースト法律事務所の弁護士(弁護士田中清、弁護士若林諒、弁護士青木丈介、弁護士土屋賢司、弁護士小谷健太郎)が日々の業務を通じての雑感や法律トピックス等について、自由気ままに綴っていきます。


by 銀座ファースト法律事務所