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神戸北区の5人殺傷事件、心身喪失で無罪

2017年7月16日早朝、神戸市北区の住宅街で、被告人(当時26歳)が祖父A(当時83歳)を金属バットで殴打し、それを止めようとした母親D(当時52歳)も殴打しましたが、Dは、身の危険を感じたため屋外へ避難しました。その後、被告人は、祖父Aを包丁で何度も刺して殺害した後、祖母B(当時83歳)も祖父Aと同様の手口で殺害しました。A・Bを殺害し終えた後は、近所に住む女性C(当時65歳)・E(当時65歳)を襲い、Cを殺害し、Eに重傷を負わせました。


被告人(事件当時26歳)は、中学卒業後、神戸市内の工業高等専門学校に進学しますが、同校を中退し、物流会社に一時勤務した後に退職しました。その後、コンピューターの専門学校に入学して卒業後はIT会社に就職しましたが、それもまたすぐに退職しました。被告人は、学生時代トラブルを起こすようなことはなく、同級生は、「おとなしく勉強熱心だった」、「彼は朗らかな性格だった。」と口をそろえて言っているそうです。

また、専門学校の友人は被告人が「家族が厳しいと」と、不満とも取れるような発言をしていたそうです。2018年5月11日、神戸地方検察庁は、被告人を責任能力が問えると判断して神戸地方裁判所に起訴しました。


本事件の刑事裁判(裁判員裁判)の第一審は、罪状は殺人、殺人未遂、住居侵入、建造物侵入、銃砲刀剣類所持等取締法違反でした。


神戸地裁は、第一審の初公判(裁判員裁判)が開きました。被告人Tは、起訴内容を認めましたが、弁護側は、「事件当時、被告人は罪に問えない心神喪失状態であった」として無罪を主張しました。一方、検察側は、「犯行当時被告人は軽度の精神疾患を患っていて心神耗弱状態にとどまり、限定責任能力があった」と主張しました。


検察は、起訴を行う前に2人の精神科医に精神鑑定を依頼していました。1人目の医師は、被告人が「哲学的ゾンビ」を人ではないと思っていたため、「人を殺してはいけない」という規範に直面していなかったと分析し。精神障害が動機に与えた影響は「圧倒的」だったとして、心神喪失状態だと判定しました。一方2人目の精神科医は、被告人には、妄想の内容を疑い、犯行をためらう気持ちがあり、「哲学的ゾンビ」が人の可能性もあると認識していたと説明しました。


そして、検察官は、被告人の精神状態の悪化は「中等度」にとどまり、犯行に及ぼした影響は「圧倒的とは言えない」として、心神耗弱状態だと主張しました。2人目の医師の鑑定の問題点は、被告人との面接が1回限りで5分程度しかありませんでした。2021年10月25日に論告求刑公判が開かれ、神戸地検の検察官は、被告人に無期懲役を求刑しました。神戸地検は論告で、「犯行は悪質で、本来ならば死刑が相当であるが、被告人は統合失調症の影響で心神耗弱状態であったため、法律(刑法第39条)上減軽しなければならない」と指摘しました。一方で弁護側は、被告人は犯行当時統合失調症の影響で心神喪失状態だったとして無罪を主張しました[12]。


2021年(令和3年)11月4日の判決公判で、神戸地裁は、判決の主文を後回しにして、先に判決理由から言い渡しました。同地裁は判決理由で、「自分と知人女性以外は哲学的ゾンビだとする妄想の圧倒的影響のもとで犯行に及んだ疑いが払拭できない」として、1人目の医師の鑑定を証拠採用し、刑法第39条の規定に基づき、被告人に無罪を言い渡しました。


確かに、A、B及びCに対する殺人罪は、殺人という重大な結果をもたらしたもので、その殺害方法も残虐ですし、D,Eに対する殺人未遂罪も、Eには重傷を負わせるなど、酌量の余地はないものというべきです。


しかしながら、刑法39条1項は、「心身喪失者の行為は、罰しない」との明文の規定があり、裁判所は、この規定を適用して、被告人を無罪にしたものです。

同条2項には、「心身耗弱者の行為は、その刑を減軽する」とあります。


私も、裁判所勤務時代、心身喪失か、心身耗弱か随分迷ったことが、何度かあります。

しかし、本事件については、被告人の事件当時の行動を冷静に見つめて、裁判所は、心身喪失者であったと判断したのです。裁判所(裁判員を含む)は、相当迷ったでありましょうし、迷った末に、刑事責任能力があったとは認めるに足りないとしたのです。私は、裁判官の経験がある者として、その判断を責めることはできないと思います。


しかし、検察官としては、控訴し、もう一人の精神科医に精神状態を鑑定してもらうことも大事かもしれません。2番目の精神科医は、被告人と5分しか面会していないのですから、もう少しじっくりと調べるべきでしょう。


 

弁護士法人銀座ファースト法律事務所 弁護士 田中 清


# by lawyer-tkg | 2021-11-16 18:21

硫酸を浴びせる行為又は、熱湯を掛ける行為と罪責

1 今年の8月24日、東京 港区の地下鉄・白金高輪駅の構内で22歳の会社員の男性がエスカレーターに乗っていたところ、男に追い抜きざまに突然、液体(硫酸)を掛けられました。

男性は顔などにやけどを負う大けがをして病院に搬送されたということです。

 また、男性の後ろにいた34歳の女性も床に飛び散った液体で滑って転倒し、足に軽いやけどを負いました。この事件は、犯人は、報道では確か殺人未遂罪で逮捕されたと聞きました。


2 今年8月31日に大阪府摂津市のマンションで、交際相手の子どもである当時3歳の男の子に熱湯をかけるなどして殺害したとして、警察は9月22日に同居していた23歳の男を逮捕しました。

  殺人の疑いで逮捕されたのは、大阪府羽曳野市に住む無職・M容疑者(23)だそうです。警察によりますと、M容疑者は8月31日の午後、交 際相手の女性(23)と同居する摂津市内のマンションの風呂場で、女性の長男である桜利斗ちゃん(当時3歳)の全身に熱湯を5分以上かけるなどの暴行をくわえて、殺害した疑いがもたれています。警察によりますと、当時、M容疑者本人が消防へ通報し、消防が駆けつけた際には桜利斗ちゃんは裸の状態で全身に重度のやけどをしていて、心肺停止の状態だったということです。  


3 さて、1と2の両事件は、どのような罪責(殺人罪、殺人未遂罪・傷害罪又は障害致死罪)に問われるでしょうか。


  殺人か、傷害かを区別する要素は、①その行為・手段によって被害者を死亡させる可能性があるかどうか、②犯人が主観的に殺害の意図を持っていたかどうか、③犯人が客観的にも殺害の意図を有していたと認められるかどうかによって、決められます。


  1の事件は、被害者の立場に立ってみると恐ろしい事件ですが、果たして、硫酸の量にもよりますが、報道から推認しますと、それほど多量の硫酸を掛けたとは思えません。死の結果を招いたとの報道もありません。そうすると、1の事件は、傷害罪(刑法204条・15年以下の懲役または50万円以下の罰金)として、起訴されるものと思います。


  2の事件は、無抵抗の3歳の男児に熱湯を5分以上掛けて死亡させたというむごい事件です。熱湯を5分以上掛ければ死亡する可能性は十分あります。したがって、この事件は、おそらく殺人罪(刑法199条・死刑、無期懲役又は5年以上の有期懲役)として、起訴され、処断されるものと思います。しかも、殺害方法の無残さから考えると、相当重い実刑で初段されるのではないでしょうか。


弁護士法人銀座ファースト法律事務所 弁護士 田中 清


# by lawyer-tkg | 2021-10-10 20:42

【少数株主問題その2】当事務所の解決策(非上場株式の譲渡方法・譲受先の探し方)

その1で述べましたとおり、非上場株式については、株式を譲渡するには取締役会の承認が必要とされていることが多いのです。


 したがって、少数株式の譲渡は困難であり、譲渡人は、譲受人が見つかった場合においても、会社に対して、譲渡承認請求をすることになります。


 会社が譲渡について承認してくれれば、譲受先に譲渡することができますが、会社が株式譲渡について承認しない(否認する)場合、会社が自ら買い取るか、会社の指定する第三者の指定買取人が購入する形となります。

 そして、譲渡人は、会社ないし指定買取人との間で、売買価格を協議することになります。

この売買価格が交渉で定まらない場合には、裁判所に対して、売買価格の決定の申立てをすることになります。


このように、非上場株式についての譲渡方法自体は存在しますが、上記のとおり、譲受人を探すことが難航する可能性が極めて高いのです。


そこで、当事務所では、そのような少数株主の皆様の悩みを解決するために、非上場株式(少数株式)の第三者への譲渡先(売却先)を探索するルートについてのノウハウを有しており、公認会計士その他の専門家と連携を取りながら、お悩みを解決することが可能です。


【弁護士費用等】

当事務所の少数株主問題については、完全成功報酬であり、非上場株式の譲渡による売却代金から弁護士費用を捻出することができるため、クライアントの皆様には、事件が終わる段階まで、弁護士への着手金(手数料)のご負担はありません(着手時においては、最低限の事件処理の実費(調査費用、交通費等)のみを預からせていただきます)。


ただし、上記は、最初から受任した場合に限りますので、抗告審のみを受任する場合などでは、着手金及び預り金をいただくことになります。


弁護士法人銀座ファースト法律事務所 弁護士 田中 清


# by lawyer-tkg | 2021-09-10 12:18

【少数株主問題その1】非上場株式の少数株式を保有することによるリスクとは

 大部分の非上場会社においては、大株主が経営を支配し、少数株主を意識した経営になっていない場合が多いのです。会社の利益は、役員報酬等により分配されており、少数株主にとっては、配当なども受領できず、適正な経済的な利益を受けることができないことが多いのです。


 一方で、相続などが発生した場合には、税務当局は、概ね、純資産方式で株式を評価するため、会社に含み資産があるときには相続が発生した場合に、遺族等が多額の相続税を支払わなければならないリスクが現実化します。したがって、少数の株式の価格が税務当局に何億円にも評価され、うっかり相続すると、遺族が全財産を失うことにもなりかねません。


 非上場会社においては、定款上、株式を譲渡するためには、取締役会の承認の決議を要するとされている場合がほとんどです。上記リスクを回避するために、譲渡しようとしても、買い手を見つけることが極めて難しいのです。


 たまたま、買い手がみつかったとしても、取締役会で譲渡の承認が得られなければ、会社の言い値で譲渡を迫られるということになりかねない場合がほとんどです。


 以上のように、非上場会社の少数株主は、経営による経済的な価値を受けることができないデメリットがある上、相続のときに子孫に相続もさせられないほどの損失を与える可能性もります。また、非上場の会社の情報開示は限定されているため、流動性が低く、買い手がさらに第三者へ売却することが難しいのです(つづく)。


 弁護士法人銀座ファースト法律事務所 弁護士 田中 清


# by lawyer-tkg | 2021-08-23 22:23

池袋暴走事故の被告人の飯塚氏に禁固7年の求刑

飯塚氏(現在90歳)は、旧通産省工業技術院の元院長ですが、2019年4月19日、東池袋において自動車を運転中、自動車が暴走して、松永真菜さん(享年31)と長女の莉子ちゃん(享年3)の尊い命を奪い、更に10人にケガを負わせました。


事故後、被告人が高齢に加えて当初は入院して、逃亡や証拠隠滅のおそれがなかったことから、警察が逮捕せずに捜査したことに世論が沸騰しました。被告人が東大出身のエリート(いわゆる上級国民)なので、被告人に忖度し、特別扱いしているのではないのかと、多くの国民から反感を買いました。


しかし、逮捕は、捜査機関の申請に基づいて、裁判官が逮捕する権限を与える許可状をいいます。 裁判官は、被疑者が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由があり、しかも逃亡のおそれまたは罪証隠滅のおそれがあって、逮捕の必要が認められるときは、検察官または司法警察員の請求により、逮捕状を発するのです(刑事訴訟法199条)。


しかし、本件は、上級国民だから逮捕しなかったのではなく、当時被疑者が高齢であり、入院していて、逃亡や証拠隠滅のおそれがなかったことから、逮捕をせずに、在宅のまま取り調べをしたものです。


被告人は、事故当日の運転については、妻と自動車でレストランに向かっていたところ、エンジンが高速回転し、“意図しない加速”が起きて「制御不能でパニック」になったと主張しました。このような被告人の弁解が、多くの国民から反感を受けたのかもしれません。そして、弁護側からの質問の最後には、「記憶に正直に答えているが、結果は重く受け止める」と述べたそうです。


今回、刑事裁判の終結にあたり、検察官は、飯塚被告人に対し、禁固7年を求刑しましたが、これについても上級国民だから忖度したもので、求刑が軽すぎるともインターネットで話題になっています。 


しかし、自動車運転処罰法5条には、過失運転致死傷の罪が定められています。すなわち、「自動車の運転上必要な注意を怠り、よって人を死傷させた者は、7年以下の懲役もしくは禁錮、または100万円以下の罰金に処する。」というものです。


したがって、本件が過失犯である以上、禁固刑を選択するのは、ごく当然の法解釈であり、禁固7年は禁固での最高刑であり、法律を改正しない限り、これ以上の刑を言い渡すことはできません(仮に、現在法改正をして、重い刑に法改正したとしても、罪刑法定主義の原則から、改正後の刑を言い渡すことはできません。)。


また、求刑は、検察官の刑についての意見です。裁判官は検察官の求刑意見を参考にはしますが、これに拘束されることはあり得ません。


銀座ファースト法律事務所 弁護士 田 中  清


# by lawyer-tkg | 2021-07-20 06:23

銀座ファースト法律事務所の弁護士(弁護士田中清、弁護士若林諒、弁護士青木丈介、弁護士土屋賢司、弁護士小谷健太郎)が日々の業務を通じての雑感や法律トピックス等について、自由気ままに綴っていきます。


by 銀座ファースト法律事務所