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大学入学共通テスト試験会場東京大学前刺傷事件について

 去る1月15日、大学入学共通テストの試験会場だった東京大学(東京都文京区)近くの路上で受験生の高校生ら3人が、高校2年生の少年(以下「少年」といいます。)により刺傷されるという事件が発生しました。被害者は高校生2人が軽傷、初老の人1人が重傷を負ったということです。少年は、事件の直後、警視庁の警察官により殺人未遂の疑いで現行犯逮捕されました。


 しかし、事件の直前に、少年は、東京メトロ南北線電車内において、人が現に乗っていて、走行中の地下鉄内において、エタノールを含む液体を撒き、着火剤を複数回ばらまくなどの行為をしたそうです。東京メトロの電車は、燃焼するまでには至りませんでしたが、同電車を「回送」にした上、駅員らに消火活動や避難誘導などをさせて東京メトロの業務を妨害しました。


 前者(学生に対する刺傷行為及び大人の人に対する刺傷行為)は刃物を用いた傷害行為ですし、殺害に至る行為でありますので、殺人未遂罪の疑いがあることは、明らかです。


 後者の現住建造物等放火罪とは、放火して、現に人が住居に使用し、または現に人がいる建造物や電車等を焼損した場合に成立する犯罪です。


 今回警察は、電車の運行等の業務を妨害したとして、敢えて3年以下の懲役又は50万円以下の罰金の刑罰を定めている刑法234条、同法233条の威力業務妨害罪で逮捕しました。エタノールを含む液体を撒き、着火剤を複数回ばら撒いたのですから現住建造物等放火罪の実行の着手もありますので、現住建造物等放火未遂罪の犯罪も成立したと言えるでしょうが、少年の将来も考えて現住建造物等放火罪での逮捕はしなかったのかもしれません。


 しかし、今回なぜ、少年はこのような罪を犯したのでしょうか。少年によりますと、少年の通っている高校は、全国的にも有名な進学校で、特に医学部への進学率は全国でもトップクラスだったそうです。

 そして、少年は、東大の医学部を目指していたそうですが、2年生になって成績が落ち、このままでは東大医学部に合格することは難しいと思い、人を殺して、その罪責を背負って自殺したいと思ったそうです。しかし、医学部は東大だけではありませんし、経済的な問題なら、地方の国立大学医学部や公立大学医学部もあります。また、医学部だけでなく、いろいろな選択肢もあったはずです。


 被害者の高校生2人は幸いにも軽傷だったようですが、被害にあったPTSDなどで、少なからず受験に対する影響はあったでしょう。


 可哀想なのは、被害者である重症の初老の方ですが、マスコミもほとんど取り上げないのですが、この方のことも忘れてはならないと思います。

 いずれにしても割り切れない最近の事件の一つです。


弁護士法人銀座ファースト法律事務所 弁護士 田中 清


by lawyer-tkg | 2022-02-24 19:00

銀座ファースト法律事務所の弁護士(弁護士田中清、弁護士若林諒、弁護士青木丈介、弁護士土屋賢司、弁護士小谷健太郎)が日々の業務を通じての雑感や法律トピックス等について、自由気ままに綴っていきます。


by 銀座ファースト法律事務所