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電気柵事故について

 今年の7月中旬、静岡県西伊豆町で、動物よけの「電気柵」の近くにいた7人が感電し、2人が死亡するという事故が起きました。亡くなった2人は、共に40歳代半ばで働き盛りです。子供を助けようとして川に入り、感電死したものと考えられます。
 この事件の問題点は、「電気柵危険」の注意書きをしていなかったこと、漏電防止装置を付していなかったこと、設置につき行政庁の許可を得ていなかったこと(行政庁は、川付近であり、許可申請があっても、許可することはあり得ないということでした)の3つの問題点があります。

 さて、今後、法律上どのようなことが予想されるでしょうか。
 まず、民事訴訟です。2人が働き盛りの一家の大黒柱であることからしますと、相当高額(1人1億円以上)になることが予想されます。おそらく保険にも入っていないでしょうから、全額自腹になると思います。若干の過失相殺はなされる可能性はありますが、電気柵設置者の上記過失の大きさに鑑みると、被害者側2割程度の過失と捉えるのが相当であろうと思います。
 次に刑事事件です。まず、業務上過失に当たるかどうか問題ですが、構成要件は厳格に解釈すべきで、むやみに拡張解釈をすべきではないので、「業務上」には当たらず、「重過失致死」に該当すると考えます。重過失に該当するかどうかですが、上記の電気柵設置者の過失内容に照らすと、重過失に該当すると言ってもいいでしょう。重過失致死は、業務上過失致死と同様に5年以下の懲役若しくは禁錮、又は100万円以下の罰金となります(刑法211条)。

 自転車事故のときにも述べましたが、このような事件では、加害者も軽い気持ちで電気柵を設置したのですが、まさか2億円以上の損害賠償を支払うことになるとは、夢にも思わなかったでしょう。
 自動車事故のときには、任意保険に入っていることも多いので、保険会社から相当額の保険料が支払われるでしょうが、本件については、保険がないでしょうから、加害者・被害者のどちらも悲惨です。
 加害者は、全財産を処分しても2億円もの賠償金は工面できないでしょうから、自己破産の申立ての道を選ぶことも予想されるでしょうし、そうすると、被害者の損害が十分填補されないことになります。
 「どちらも可哀そうな結果になるなあ」というのが、新聞の読後感です。

  弁護士 田中 清(弁護士法人銀座ファースト法律事務所)
by lawyer-tkg | 2015-07-30 11:38

銀座ファースト法律事務所の弁護士(弁護士田中清、弁護士若林諒、弁護士青木丈介、弁護士土屋賢司、弁護士小谷健太郎)が日々の業務を通じての雑感や法律トピックス等について、自由気ままに綴っていきます。


by 銀座ファースト法律事務所